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結果発表!

第1回真ショートショートコンテスト一次選考通過作品45作品から、
一般投票と選考委員の投票をもとに以下の13作品を入賞作品として選出しました。

作品 作者
最優秀賞
(3万円)
該当なし
優秀賞
(1万円)

疑惑 まえぞう
僕らの秘密基地 八雲
「を」の悲劇 華丸
佳作
(5千円)
株式個人 機島純人
紅茶 福田常世
小人の靴屋的 雪国の人
小さな恋のおはなし 島田宗一良
天才外科医 seiji
人を食う 瀬川潮
未練 瀬川潮
予知能力 卯月絢
デンバーの親子 芦田晋作
リーダー 芦田晋作




☆選考結果について☆

 選考委員による審議の結果、上記のように入賞作品を決定しましたが、まずは選考内容について簡単に説明したいと思います。

・最優秀賞なし

 全作品の中で最も優れた作品を「最優秀賞」として選出する予定でしたが、今回は「該当なし」とすることとしました。最優秀賞というからには、選考委員、一般読者ともに最優秀とするのに異論のない作品を選出すべきでしたが、45作品の中にそれを満たす作品は残念ながらありませんでした。
 当初、本戦は60作品で行う予定でしたが、予想以上に作品集めに時間がかかり45作品でこれを行わざるを得ない状況であったこともからも、今回のコンテストは質、量ともに目標とするレベルに達していないと考えています。最優秀賞なしはわれわれとしては仕方のない選択でした。このことについては、「真ショートショートコンテストの今後」で後述します。

・優秀賞

 優秀賞(賞金金額1万円)には『疑惑』『僕らの秘密基地』『「を」の悲劇』を選出しました。選考委員による選評は以下のとおり。

『疑惑』
 これぞショートショートというようなお手本的な作品。
 タカヒロとの関係について詰め寄られるアキは、涙を流しながらそれを否定する。そこに真実の言葉を感じ取ったケンタはアキを信じることにする。
 ――確かに、今のアキは嘘をついているようには見えない。信じよう。
 確かにアキは嘘はついていなかった。そして、最後の一行で語られる逆転の真実。この状況で涙を流しながら一面的な真実のみを語るアキの人間的な怖さに、読者の票が集中した。
 典型的なショートショートとして完成度はかなり高いが、典型的なオチであるがゆえにもうひとつ何かがほしいようにも思える。
(八雲)

『僕らの秘密基地』
・何度も読み返しても色褪せない、ラストの余韻が大好きです 。
・文句なしの出来。ショートショートであの空気感をだせるの はすごいです。
・何度読んでも爽やかなノスタルジーとちょっとした感動を覚 える。こういう作品ってなかなかないと思います。
 以上、読者さんの感想からの抜粋です。作者である八雲氏は 、今大会の審査委員でもあり、正直、優秀作として選出することにためらいはありましたが、総合的、客観的に判断した場合 、選ばないのは不自然であると、私は思いました。それくらい 、うまく書けているということです。
 秘密基地が何故、少年たちの心を熱くさせていたかを考えたとき、ほんの数人しかその存在を知らないという、秘密の共有こそがその源であったと思います。実際には、その秘密は、親友へ、そのまた親友へと、徐々に伝播していくのですが、言ってはいけない、でも言いたいといった葛藤の末に、それは行われていたのです。そのあたりのなんともいえない甘酸っぱさが 、うまく表現された作品だと思います。
(Ribos)

『「を」の悲劇』
 アイデアが光る作品。作家の文章で「を」が使われていないことは、途中で気がつくだけに、もう一ひねりがほしい気がするが、作品としてはうまくまとまっている。最後は「を」不要論が優勢で終わっているが、ここで再逆転、まさに一ひねりが加わるとさらによかった。
 言葉というのは時代によって変化するものだが、守るべきところはある。「を」が法律で禁止されるなんていう「馬鹿げた」話はないだろうが、「を」が「お」の“旧字体”として日本語から消えてしまう日が来ないとは言い切れない。
 日本語の乱れを少し極端化して風刺する作品として、高く評価したい。
(八雲)

・佳作
 佳作(賞金金額5千円)には10作品を選出しました。選考委員による選評をご覧下さい。

『株式個人』
 ショートショートの見せ場は言うまでもなくオチであるが、読者を惹きつける設定も醍醐味の一つである。
 この作品の「個人の株式が上場される」という魅力的な設定は、株主たちの非情な営利主義と、株主に翻弄される哀れな青年との対比によって、見事に演出されている。考えてみるとわれわれは誰しもが他人に何かを期待し、他人から何かを期待されながら生きている。その意味では、投資と配当という株式個人のこの構図は、現代社会の一つの側面を表現しているのかもしれない。その窮屈さから抜け出し、自由を得ようとする青年にエールを送りたくなる。
 感想掲示板などでもオチが読めたという意見がいくつかあるようだが、その点は確かに物足りない。もし、この設定に負けないくらいのオチが用意されていたら……と思うのは少し欲張りすぎかもしれない。
(八雲)

『紅茶』
 紅茶もブラックユーモアで書かれた作品です。いつも一緒にいたいという気持ちが高じて最後には殺人をおかしてしまう狂気が、紅茶という小道具をもとに、うまく書かれていたと思いま す。ほろにがい、などの伏線もお見事です。遺体安置室勤務と いう仕事が存在するのかどうか、少し疑問ではありますが、罰則ということであれば、それもありなのかなと思います。もし、私がこれを書いたなら、最後に「ブゥフオー!! 春雄は紅 茶を一気に噴出した」とか書いてしまうところですが、まるで気がつかないという構図も、それはそれで面白いのかもしれま せん。
(Ribos)

『小人の靴屋的』
 小人の靴屋的は、一読して気にいった作品です。ミステリーでもなんでもないことはすぐにわかるのですが、ほとんどの人が作者さんの思い通りにミスリードさせられて、最後で唖然とするのではないでしょうか?
 そして、この結末はちょっとマザコン気味で気持ち悪くもありますが、母親の切ない感情をうまく表していてなぜか同情をしてしまいました。 この作品はまず映像化は無理なんでしょうが、イマジネーショ ンで作った光景が、見事に壊されるというのも、また楽しいも のです。ちょっと残念だったのは、母親の名前を途中で出して欲しくなかったことくらいですかね。その名前を、よし子にしたセンスは買います。面白かったです。
(Ribos)

『小さな恋のおはなし』
 少し裏事情を書いてしまうと、この作品は作者さんに一度書き直してもらった作品である。初稿の作品は一読ではわかりにくい点が多く、もう少しわかりやすくしてほしいという要望を酌んでもらって、公開している形になったのだが、今度はヒントが多すぎて逆にわかりやすすぎるようになってしまったかもしれない。
 文章ではいわゆる「下ネタ」が、少々どぎつい表現で描かれており、抵抗のある人が少なからずいると思う。この点についても改稿できればしていただきたかったのだが、ソフトな表現にすることで失われるものもあり、この形のままになった。――裏事情終わり。

 内容としては語り手が実は毛じらみだったという話なのだが、ミスディレクションとしての人間の男女の関係が矛盾なく整合していて、完成度は高い。上記の2点がもう少し修正されれば、申し分ないのだが、「下ネタ」の部分は作品の根幹なので、改善は難しいだろうか。
(八雲)

『天才外科医』
 天才外科医はブラックジャック、いやブラックユーモアが心地 よい作品です。軽妙なタッチで読者を楽しませつつ、最後のオチにつなげる手法は見事です。 希望が絶望に変わった瞬間の場の様子を考えると、不謹慎ながら笑えてきます。多分にありがちな展開といえなくもないのですが、典型であるが故に余計に、ああやられてしまったなぁと いう思いは強いのです。いや、楽しませていただきました。ありがとうございました。
 絶望を笑うということは漫画と小説の中だけに留めたいのですが、それでも現実的な話だと後ろめたくなったりするものです 。その点、これくらい荒唐無稽な話だと、罪悪感なしで愉しめますね。自らの創作にも、このパターンは意識していきたいと思いました。
(Ribos)

『人を食う』
 魔物がいい味を出している。小枝を弄ぶ登場シーンに、最後の台詞を残して山奥に消えていくシーン。人を食う魔物らしく、実に“食えない”やつである。残された「人間性のない」男はそのあとどうしたのだろう? 人間ではない彼は、すでに人外の魔物になっているのだろうか。
 感想掲示板にもあるが、一緒に山に入った女性がただ殺されるだけの“捨てキャラ”になってしまっているのが惜しい。インターネットで知り合った見知らぬ女性ではなく、もう少し創り込んでほしかったように思う。
 魔物に食われるように必死で仕向ける男が、実はすでに食われていたというラストがもう少しすんなり理解できるとショートショート特有の「やられた」感がより増すのではないかと思う。
(八雲)

『未練』
 運命の赤い糸ならぬ、未練の透明ゴムと言ったところでだろうか。もしかして後ろ髪をひっぱるのはこいつ? 不思議な世界が短い時間、限られた空間の中でうまく表現されていて、多くの読者票を得た。
 ショートショートではこういう「不思議な世界」を軽く扱うのにも向いているというのを再認識させられた。
(八雲)

『予知能力』
 ミスリーディングの手法を用いた作品である。「私」の一人称で描かれており、この「私」の思考が読者をミスリーディングしていく。無口な女の子ミドリちゃん。身体に残る虐待を思わせる痣。数々の予知能力の証拠。最後の悲劇にいたるパーツが効果的に配置されていて、読者をラストの一行に誘導する。特に、予知以外のことをほとんど喋らないミドリちゃんのキャラクターがうまく生かされている。活発な子であったら、悲劇は回避されてしまうだろうし、心の奥で考えていることがわからないから、自分が殺されるという状況でも平然としていられるのだと「私」(=読者)を納得させられるわけだ。
 ミスリーディングというのは、読む側の立場に立って書くというのが肝心であり、難しいところだ。読者はどう読むか、どう考えるか。読者の心を掌握する技術が必要になる。
(八雲)

『デンバーの親子』+『リーダー』
 ショートショートにおいてはオチが重要な要素になるが、そのオチの効果を最大限に演出するためにはオチと、設定や伏線との有機的な絡みが欠かせない。
 ショートショートオチの定型の一つに、“(語り手が)実は○○でした”というのがある。最後まで○○の部分を読者に隠しておき、最後に明かすというパターン。この様な作品は、実はとても多い。なぜなら比較的安易に作品を創ることができるからだ。実は犬でした、実は自動販売機でした、実は本でした、実は地球でした……。実は○○でしたというオチに、あとから適当な伏線を付け加えることで作品の体を成すことはそれほど難しくない。しかしそれだけでは、オチと設定、伏線の有機的なつながりは得られない。
 ネタを明かしてしまうが、『デンバーの親子』は“実は熊でした”、『リーダー』は“実はウサギでした”という作品である。これだけだと元も子もない言い方だが、実際にそうだからしかたがない。しかし、この二作品は単に○○を隠して明かすだけではなく、しっかりと作りこんである点を評価したい。感想掲示板では、どちらも少し無理があるという指摘があるが、それを補う魅力があった。
 『デンバーの親子』はしっかりとしたテーマがある。親子の間で語られる銃の怖さと銃の意味。人間の親子の会話だと思って読んでいたときと、熊の親子の会話として読んだときの受ける印象が違う。熊だとわかると、銃社会に対する批判がより辛辣に響く。
 『リーダー』は新聞紙を折って月に行くという飛びぬけたアイデアと、微笑ましいやり取りがすばらしい。随所にある伏線がショートショートとしての完成度を高めている。
(八雲)

・選考結果まとめ
 入賞作品の選出は以上のようになりましたが、選出されなかった作品の中にも選外とするのがためらわれる作品も多数ありました。選考内容に対する疑問など、選考委員への質問・要望がありましたら、掲示板などを利用してお知らせください。
 真ショートショートコンテストは次の展開に進みますが、コンテスト自体は形を変えて継続します。今回入賞を果たせなかった作者の方も、見事入賞を勝ち取った作者の方も、引き続き真ショートショートコンテストをよろしくお願いいたします。

・入賞者の方へ
 入賞者の方には、後日メールにて入賞賞金の振込み先をお尋ね申し上げます。しばらくお待ちください。

真ショートショートコンテストの今後について
 真ショートショートコンテストは、ネットで優れたショートショート作品を集め、最終的に「出版」を目指すという目標で行っています。出版に向けて、出版社への働きかけを開始していますが、正直なところ今回のコンテストだけではそのために十分な作品をまだ集められていないと考えています。当初目標としていた60作品に到達する前に本戦を開始しなければならなかったこと、また作品の質についても満足できるレベルには達していません。
 コンテストは今後、より面白い作品を数多く集めるために、継続的に作品を募集していきます。第1回真ショートショートコンテストには、足掛け2年という長大な時間を費やしてしまいました。そこには、われわれの努力不足や、コンテストの形態のまずさもあったと思います。作品は化石資源などとは違い、数に際限がありません。ショートショート作品は、作家の頭の中に無限に埋まっています。第1回のコンテストを終えた今、真ショートショートコンテストはその頭の中に埋まっている作品を、作家の皆さんが掘り起こす活力を与えられるコンテストになるべく、進んでいきたいと考えています。
 現在、われわれは真ショートショートコンテストの新しい方向性をさぐりながら、新システムの構築を行っています。詳細については近日中(8月初旬ごろ)にお知らせしますが、2007年9月中の再開を目処に、短期継続型のコンテストに生まれ変わる予定です
 現在サイトで公開している作品は、コンテストがシステムを一新して再開するまで公開させていただきます。その後は公開を終了し、出版が現実に近づいた時点で作者の皆様に寄稿のお願いに上がりたいと考えています。
 最後に、第1回真ショートショートコンテストはこれで終了となりますが、たくさんの作品を投稿いただいた作者の方々をはじめ、感想や投票などの形でご支援をいただいた皆々様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
 コンテストはしばらくの休止期間を経て、新しい形で皆様のお目にかかろうと思います。どうぞ今後とも真ショートショートコンテストをよろしくお願い申し上げます。

平成19年7月22日 選考委員一同